組織内の分断が進む時代に求められる病院の組織づくり/組織開発のアプローチ
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業種
病院・診療所・歯科
- 種別 レポート
現代社会は、組織内での一体感が薄れやすい時代です。過去10年ほどで注目されてきた「コンプライアンス」、「ハラスメント」、「働き方改革」、「多様性と個々の尊重」、「コロナ禍による集団活動の自粛」は、組織やリーダーにさまざまな規制をもたらしています。これらの要素は、組織内や個人同士のつながりを断ち切り、心理的な距離を生み出しています。
組織が大家族であった過去
15年ほど前まで、組織は大きな家族のようでした。職員旅行や懇親会、全体会議など、職員同士は頻繁に交流し、皆が顔見知りで親しい関係であったといえます。社会には上位下達の精神性が根付き、部下は上司や先輩を尊敬し、指示に忠実に従う姿勢もありました。上司は部下に厳しく指導・注意をおこなっていましたが、それ以上に深い愛情がありました。そして、理念やトップの言葉は絶対的なもので、サービス残業や休みを取れないなどの問題は生じていたものの、組織は一つにまとまっていたといえます。
組織がバラバラである現代
現代では組織内の交流が減り、上司と部下の距離が広がる傾向があります。理念や方針は絶対的なものではなくなり、トップの言葉も浸透しづらくなりました。若手職員は自分たちの将来に不安を覚え、組織や上司が自分たちをどのように扱うのかを観察し、自己主張が強まっています。上司は、働き方改革やハラスメント規制が求められる中で、多様な個性をもつ部下たちをまとめることに苦労し、マネジメントを回避するような姿勢を取りがちになります。
多くの組織が、むすびつきが弱まり、足並みの揃わないバラバラな状態に陥っています。この状況は、時間の経過とともに悪化し、組織内にさまざまな問題症状を引き起こします。例えばそれは、職員の離職と反発、上司の疲弊による精神疾患もしくはハラスメント態度、エンゲージメントの低下、トップや病院への不満、リーダーの成り手不足、部署間の対立、生産性の低下、サービス品質の悪化などです。
トップと幹部に求められるのは「新しい時代に向き合うこと」
組織を取り巻く環境は大きく変化しています。厄介なことに、この不穏な流れは今後も加速していくことでしょう。
今後、組織が存続していくために必要なことは、新たな時代に適した組織づくりの着手です。組織を取り巻く環境変化を正しく理解し、従来の組織運営が通用しづらくなっていることを受け止め、どのような組織を作れば職員が育ち、チーム力が高まり、生産性を上げられるのかについて、根本から見つめ直すことが必要です。
診療報酬や働き方改革などの法や、DXやシステムなどのテクノロジーは、時代にあわせた合理的な経営を推進していくうえで、とても重要なことです。
しかし、制度やシステムといった目に見えるものを変えたとしても、現場職員がそこについてこれなければ意味がありません。一人ひとりや組織全体の行動の原動力は、目には見えない意識、士気、関係性、風土といった深層部分です。現代の多くの病院組織はこれら深層部分が課題となっているのです。
組織、個人に活力を作り出すには
これからの病院は、現在を取り巻く時代の流れに乗りつつも、「いかにして組織が一つにまとまり、チームと個人の士気と活動力を高めていくか」にフォーカスを当てた組織づくりが重要になってきます。それは、過去の大家族主義のようなものでもなく、これまでのような役割と責任に基づく管理主義でもありません。共同体、コミュニティーとしての空間をデザインし、皆で組織を育み、地域社会に関与していくマインドと行動を創り出していく必要があります。このような組織づくりを実現するには、理事長や部長クラスの幹部がワンチームとなり共通のビジョンを持つこと、師長・課長の管理職クラスが部署という境界線を超えた繋がりを感じて協働活動を繰り広げること、係長・主任のリーダークラスの受け身姿勢を脱却し当事者性を高めることの3点が鍵を握ることになります。
そして、これらを育むためには、新時代における組織づくりの概念と思想に基づいて継続的な活動を繰り広げていく必要があります。目に見えない意識、士気、関係性、風土を育む活動に取り組まれる病院は少しずつではありますが増加傾向にあります。是非院内で検討なさってください。
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組織開発というアプローチ
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本稿の執筆者
江畑直樹(えばた なおき)
株式会社ミライバ 取締役
2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事。2018年に株式会社ミライバを設立し、組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。成人発達理論、学習する組織、U理論、インテグラル理論、NVC等の理論をベースとし、首都大学東京専門職大学院や日本社会事業大学専門職大学院では、これら理論を軸とした組織創りやサービス開発等について看護管理者、福祉管理者を対象に授業を行う。
株式会社ミライバ/株式会社日本経営
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